【PC電源】80 PLUS認証のGoldとBronze、本当に体感できる差はある?ワット数以外の選び方【自作PC】

自作PCを組む時、あるいはBTOパソコンを選ぶ時、ついついCPUやグラボの性能に目が行きがちで、電源ユニット(PSU)選びは「とりあえずワット数が足りてればOKでしょ?」と後回しにしていないだろうか? その考え、実は結構“危険”かもしれないぞ! 電源ユニットのスペック表には、ワット数以外にも「80 PLUS認証」という重要な項目がある。特に、「Gold」と「Bronze」という2つのランクは、多くの製品で採用されており、価格も異なるため、どちらを選ぶべきか悩む人も多いはずだ。今回は、この80 PLUS認証のGoldとBronzeに、果たして“体感できる差”はあるのか、そしてワット数以外に注目すべき電源選びのポイントについて、詳しく解説していくぜ!

1. 「80 PLUS認証」とは?:電源の“燃費”を示す“エコラベル”

80Plus認証マークの一覧

まず、「80 PLUS認証」が何なのか、簡単におさらいしておこう。これは、PC用電源ユニットの電力変換効率に関する認証プログラムだ。

1-1. 交流から直流へ:電力変換の“ロス”

PCの電源ユニットは、家庭用のコンセントから供給される電気(交流 / AC)を、PCパーツが使える電気(直流 / DC)に変換する役割を担っている。しかし、この変換の過程で、一部の電力が熱として失われてしまう。これが**「変換ロス」**だ。

1-2. 変換効率80%以上を“保証”する証

「80 PLUS認証」は、この変換ロスを少なくし、電力変換効率が80%以上であることを保証する証。例えば、変換効率が80%の電源がPCパーツに400Wの電力を供給する場合、コンセントからは500W (400W ÷ 0.8) の電力を消費する。残りの100Wが、変換ロスとして熱に変わるわけだ。

1-3. BRONZE, SILVER, GOLD… ランクで変わる“効率”

80 PLUS認証には、変換効率の高さに応じて、Standard, Bronze, Silver, Gold, Platinum, Titaniumというランクが存在する。ランクが上がるほど、変換効率が高く、変換ロスが少ない(=省エネで発熱が少ない)高性能な電源であることを示している。

80 PLUS 認証 115V 内部非冗長 115V 産業用
10% 20% 50% 100% 10% 25% 50% 100%
80 PLUS - 80% 80% 80% PFC ≥ 0.90 - - - -
80 PLUS Bronze - 82% 85% PFC ≥ 0.90 82% - - - -
80 PLUS Silver - 85% 88% PFC ≥ 0.90 85% 80% 85% PFC ≥ 0.90 88% 85%
80 PLUS Gold - 87% 90% PFC ≥ 0.90 87% 82% 87% PFC ≥ 0.90 90% 87%
80 PLUS Platinum - 90% 92% PFC ≥ 0.95 89% 85% 90% PFC ≥ 0.95 92% 90%
80 PLUS Titanium 90% 92% PFC ≥ 0.95 94% 90% - - - -

2. 【本題】Gold vs Bronze:“体感”できるほどの差はあるのか?

さて、ここからが本題だ。多くの製品がラインナップされている「Gold」と「Bronze」、この2つのランクに、我々ユーザーが“体感”できるほどの差はあるのだろうか?

2-1. 変換効率の“数値”で比較:数%の違いが“意味”するもの

80 PLUS認証は、PCの負荷率(電源の最大出力に対して、どれくらいの電力を使っているか)に応じて、基準となる変換効率が定められている。

負荷率 80 PLUS Bronze 80 PLUS Gold
20% 82%以上 87%以上 5%
50% 85%以上 90%以上 5%
100% 82%以上 87%以上 5%

表の通り、GoldとBronzeの変換効率の差は約5%。この5%が、具体的にどのような違いを生むのか見ていこう。

2-2. 電気代はどれくらい変わる?:“意外と”小さい差

「変換効率が高い=省エネ=電気代が安くなる」というのは事実だ。しかし、その差は多くの人にとって“劇的”なものではない。

例えば、PCが常に300Wの電力を消費し、1日8時間、30日間使用したとしよう。(電気料金単価を31円/kWhと仮定)

  • Bronze (効率85%の場合):消費電力: 300W ÷ 0.85 ≒ 353W、月間電気代: (353W × 8h × 30day) ÷ 1000 × 31円 ≒ 2,627円
  • Gold (効率90%の場合):消費電力: 300W ÷ 0.90 ≒ 333W、月間電気代: (333W × 8h × 30day) ÷ 1000 × 31円 ≒ 2,478円

月間の差額は約149円。もちろん、使用時間や負荷、電気料金によって変わるが、電気代の節約効果だけでGold電源の高い初期費用を回収するのは、かなり時間がかかるだろう。

2-3. 発熱量は?:“静音性”に関わる重要な違い

電気代の差は小さいが、発熱量の差は無視できない。変換ロスは、すべて熱エネルギーに変わる。先ほどの例で、変換ロスによる発熱量を計算してみると…

  • Bronze (効率85%の場合):変換ロス = 消費電力353W - 供給電力300W = 53W
  • Gold (効率90%の場合):変換ロス = 消費電力333W - 供給電力300W = 33W

その差は20W。この20Wの熱量の違いは、PC内部の温度、そして電源の静音性に大きく影響する。

2-4. 部品の品質:Gold認証は“高品質”なパーツの証?

高い変換効率を実現するためには、高品質な電子部品(コンデンサ、トランス、MOSFETなど)が必要不可欠だ。そのため、一般的にGold認証を取得している電源は、Bronze認証の電源よりも高品質なパーツを使用している傾向にある。これは、電源自体の安定性や寿命にも関わってくる重要なポイントだ。

3. “体感”できる差はここだ!:Goldを選ぶ“本当”のメリット

電気代の差は微々たるもの。では、Goldランクを選ぶ“本当”のメリット、つまり“体感”できる差はどこにあるのか? それはズバリ、「静音性」と「安定性・安心感」だ。

3-1. “静音性”の向上:発熱が少ない=ファンの回転が“穏やか”

前述の通り、Gold電源はBronze電源に比べて発熱が少ない。電源ユニットは、内部の温度に応じて冷却ファンの回転数を制御しているため、発熱が少なければ、ファンの回転数を低く抑えることができる。これにより、結果としてPC全体の静音性が向上するのだ。特に、アイドル時や低負荷時にファンの回転を停止させる「セミファンレス機能」を搭載したモデルでは、Gold電源の方がファンが停止している時間が長くなる傾向にある。これは、静かなPC環境を求めるユーザーにとっては、明確に“体感”できる大きなメリットだ。

3-2. “安定性”と“寿命”への期待:高品質なコンデンサ等

高品質なパーツ、特に耐久性に優れた日本製105℃コンデンサなどを採用していることが多いGold電源は、Bronze電源に比べて電圧の変動が少なく、より安定した電力供給が期待できる。これは、CPUやグラボといった高価なパーツを、不安定な電力から守ることにも繋がる。また、高品質なパーツは長寿命であるため、電源ユニット自体が長く使える可能性も高い。

日本製105度コンデンサの画像

高品質なコンデンサはそのまま信頼性に繋がる

3-3. 精神的な“満足感”と“安心感”

「自分のPCには、高品質で安定した電源を使っている」という精神的な満足感や安心感も、電源ユニットが故障してしまった時のリスクを鑑みれば、小さくないメリットと言えるだろう。

4. ワット数“以外”の電源選び:後悔しないための“チェックポイント”

80 PLUS認証以外にも、電源選びには重要なポイントがある。

4-1. ケーブル方式:フルプラグイン? 直付け?

  • フルプラグイン:全てのケーブルが着脱可能。必要なケーブルだけを使うので、PCケース内がスッキリし、エアフローも改善される。
  • セミプラグイン:一部の必須ケーブルが直付け。
  • 直付け:全てのケーブルが直付け。安価だが、余ったケーブルが邪魔になりやすい。

    フルプラグイン式の電源ユニット

    フルプラグイン式はケーブルが少なくすっきりだ

4-2. 保証期間:メーカーの“自信”の表れ! 5年以上が目安

保証期間の長さは、メーカーの製品に対する自信の表れだ。高品質な電源は、5年、7年、10年といった長期保証が付いていることが多い。

4-3. 搭載ファンの質と制御:静音性を左右する

ファンのサイズや軸受けの種類(流体動圧軸受など)、そしてセミファンレス機能の有無や、その制御の賢さも静音性に大きく影響する。

4-4. 保護回路の種類:PCパーツを守る“保険”

過電流保護(OCP)や過電圧保護(OVP)など、様々な保護回路が搭載されているかどうかも、PC全体を守る上で重要だ。

4-5. 奥行きのサイズ:PCケースに収まるか?

電源ユニットは、製品によって奥行きの長さが異なる。特にコンパクトなPCケースを使う場合は、搭載可能な電源サイズを事前に確認しよう。

5. 結論:GoldとBronze、どちらを選ぶべき?

それで結局、どっちを選べばよいのだろうか。予算、こだわり、ほかのパーツのスペック…それぞれ事情が違うので一概には言えないが、判断基準を箇条書きでまとめてみた。

5-1. Bronzeがおすすめな人:コストを抑えたい、基本的な性能で十分

80Plus Bronzeのロゴ

  • PCの初期導入コストを少しでも抑えたい。
  • PCの静音性にはそこまでこだわらない。
  • Web閲覧やOffice作業など、PCへの負荷が比較的小さい使い方。

5-2. Goldがおすすめな人:静音性、安定性、パーツの品質を重視する

80Plus Goldのロゴ

  • 静かなPC環境を構築したい。
  • ゲーミングやクリエイティブ作業など、PCに高い負荷をかけることが多い。
  • PCパーツを長期間、安定して使いたい。
  • 高品質なパーツを使っているという安心感が欲しい。

6. まとめ:80 PLUS認証は“品質の目安”! 総合的に判断して“最適”な電源を選ぼう

80 PLUS認証のGoldとBronzeの違いは、電気代という点では“体感”しにくいかもしれない。しかし、その差は「発熱量」、ひいては「静音性」、そして内部パーツの品質からくる「安定性」や「寿命」への期待という形で現れる。電源ユニットは、PCのすべてのパーツに命を吹き込む、まさに“心臓部”だ。ここでコストを切り詰めるよりも、少し予算を上乗せしてでもGold認証以上の、信頼できるメーカーの電源を選ぶことは、PC全体の快適性と安定性に対する“賢い投資”と言えるだろう。80 PLUS認証を“品質の一つの目安”としつつ、ケーブル方式や保証期間なども含めて、総合的に判断して“最適”な一台を選んでくれ!