
2026年1月のCESで正式発表され、1月末から搭載ノートPCが全世界で続々と発売されているIntelの最新モバイルプロセッサ「Core Ultra シリーズ3(開発コードネーム:Panther Lake)」。
そんなPanther Lakeだが、2026年3月に入り、海外のハードウェア情報サイトやコミュニティ(Kurnal-Insights.comなど)にて、上位モデルである「Panther Lake-H」の非常に鮮明な高解像度ダイ写真(Die Shot)がリークされた。
普段、私たちが見ているのはCPUのパッケージ(銀色のヒートスプレッダや緑色の基板)だけだが、このダイ写真を見れば、シリコン内部にどのような回路が配置され、Intelがどんな設計思想でこのチップを作ったのかが“丸裸”になる。今回は、このリークされたダイ写真を元に、Panther Lakeの内部構造と、次世代の核となる「Intel 18Aプロセス」「Xe3 GPU」の秘密を徹底的に解説していくぞ!
- 1. あらためておさらい:「Core Ultra シリーズ3(Panther Lake)」とは?
- 2. 【特報】高解像度ダイ写真が語る「3つのタイル」の役割分担
- 3. Compute Tileの全貌:18Aプロセスに詰め込まれた最新コアたち
- 4. Graphics Tile:次世代「Xe3 (Celestial)」がもたらす圧倒的グラフィック
- 5. I/O Tileと接続性:システムの土台を支えるインターフェース
- 6. まとめ:Intelの「反撃」を決定づけるPanther Lakeの真価
1. あらためておさらい:「Core Ultra シリーズ3(Panther Lake)」とは?
ダイの解説に入る前に、Panther LakeがIntelにとってどれほど重要なプロセッサなのか、その立ち位置をおさらいしておこう。
1-1. 社運を賭けた「Intel 18A」プロセスをついに初採用
前世代のLunar Lake(Core Ultra シリーズ2)は、非常に優秀なチップだったが、製造の大部分をライバルであるTSMCに委託していた。しかし、このPanther Lakeは違う。Intelが巨額の投資を行い、「これで勝てなければ後がない」とまで言われた次世代の自社製造プロセス「Intel 18A」を初めて本格採用したコンシューマー向け製品なのだ。
Intel 18Aは、裏面電力供給技術(PowerVia)や新構造のトランジスタ(RibbonFET)を導入しており、消費電力あたりの性能が劇的に向上している。
1-2. 統合型SoCへの回帰とTCOの削減
Panther Lakeは、AIアクセラレーション(NPU)を統合しつつ、マルチチップ構成を洗練させることで、単一のSoCとして極めて高い総所有コスト(TCO)の削減と効率化を実現している。モバイルノートPCから高性能ゲーミングノートまで、幅広いラインナップをカバーするIntelの“本命”プラットフォームだ。
2. 【特報】高解像度ダイ写真が語る「3つのタイル」の役割分担
さて、本題のリークされたダイ写真に目を向けてみよう。画像からは、Panther Lake-Hが大きく分けて3つのタイル(シリコンチップ)で構成されていることがはっきりと分かる。

2-1. パッケージを構成するCompute、Graphics、I/Oタイル
- Compute Tile(コンピュート・タイル): CPUコアやNPU、キャッシュメモリなどを搭載した、まさにチップの“頭脳”。これが噂のIntel 18Aプロセスで製造されている。
- Graphics Tile(グラフィックス・タイル): 描画処理を担うGPU部分。こちらはIntel 3プロセスで製造されており、最新アーキテクチャのXe3 (Celestial)を採用している。
- I/O Tile(I/Oタイル): PCIeやUSB、Wi-Fi/Bluetoothなどの外部インターフェースを制御するタイル。
2-2. 前世代からのパッケージングの進化
IntelはMeteor Lakeで4つのタイルを採用し、ベースタイル上に配置する複雑な3Dパッケージング(Foveros)を行っていた。Panther Lakeでは、より洗練され、コスト効率とパフォーマンスのバランスを取った3タイル構成(Hシリーズの場合)に最適化されていることがダイ写真から読み取れる。
3. Compute Tileの全貌:18Aプロセスに詰め込まれた最新コアたち
最も注目すべきは、Intel 18Aで製造されたCompute Tile(またはSoCタイル)の内部構造だ。リークされたアノテーション(注釈)付き画像から、コアの配置が詳細に判明した。
3-1. Pコア「Cougar Cove」とEコア「Darkmont」のハイブリッド
HシリーズのCompute Tileには、以下のコアが搭載されている。
- Pコア(Cougar Cove) × 4:最大5.1GHzで駆動する高性能コア。それぞれに3MBのL2キャッシュを備える。
- Eコア(Darkmont) × 8:スペース効率に優れ、最大3.8GHzで駆動する高効率コア。
- LP Eコア(Darkmont) × 4:さらに低消費電力に特化した、最大3.7GHzで駆動するコア。
合計16コアのハイブリッド構成により、アイドル時の徹底した省電力から、ゲームや動画編集時の爆発的なパワーまでをシームレスに切り替える。
3-2. L3キャッシュとNPUを“スライス化”する歩留まり向上マジック
ダイ写真から判明した非常に興味深い点が、「キャッシュとNPUの分割(スライス化)」だ。18MBのL3キャッシュは3つのスライスに分割されており、PコアとEコアの近くに配置されている。さらに、AI処理を担うNPU(4.5MBの専用キャッシュを持つ)も3つのスライスに分かれている。
なぜわざわざ分割しているのかだが、恐らく「歩留まり」を向上させるためだと思われる。もし製造過程でNPUやキャッシュの一部に欠陥(不良)が出ても、その1つのスライスだけを無効化し、下位モデルとして出荷することができる。Intel 18Aという真新しいプロセスを立ち上げるにあたり、非常に賢く、かつ現実的な設計思想が垣間見える。
4. Graphics Tile:次世代「Xe3 (Celestial)」がもたらす圧倒的グラフィック
CPUコア以上に衝撃を与えているのが、内蔵GPUの進化だ。Panther Lakeには、第3世代となる「Xe3(コードネーム:Celestial)」アーキテクチャが採用されている。
4-1. エントリー向けdGPUを脅かす“化け物級”の内蔵GPU
一部のレビューやベンチマークリークでは、Panther Lakeの内蔵GPUは、もはや「内蔵」の域を超えていると話題だ。消費電力を抑えた設定であっても、『Cyberpunk 2077』のような重いゲームがフルHDで実用的なフレームレート(45fps前後など)で動作し、NVIDIAのGeForce RTX 4050(ラップトップ版)に肉薄する性能を叩き出しているというデータもある。
もはや、カジュアルゲーマーやライトなクリエイターであれば、別途グラフィックボード(dGPU)を搭載したノートPCを買う必要は完全に無くなりつつある。
4-2. 最大12 Xe3コアを搭載する「Xシリーズ」の脅威
通常のモデルは4つのXe3コアを搭載しているが、上位モデル(Core Ultra X9 388Hなど、モデル名に「X」が付くもの)は、より大きなGraphics Tileを搭載し、実に12個ものXe3コアを備えている。
この巨大なGPUタイルは、これまでのモバイルPCの常識を覆すグラフィック性能を発揮し、IntelがノートPCでのゲーミング市場を本気で取りに来ていることを示している。
5. I/O Tileと接続性:システムの土台を支えるインターフェース
3つ目のタイルであるI/O Tileには、PCが外部と通信するための機能が集約されている。
PCIe 5.0 x4 PHYや、複数のPCIe 4.0 PHY、USBコントローラ、そしてWi-Fi/Bluetoothモジュールが統合されている。リーク情報によれば、このI/Oタイルは「不良箇所を無効化して下位モデルに流用する」といったことが難しく、一部でも壊れればチップ全体を破棄しなければならない、製造上非常にシビアな部分だという。だからこそ、枯れた技術で安定して製造できる別タイルに分離しているのだろう。

Image:@Kurnalsalts
6. まとめ:Intelの「反撃」を決定づけるPanther Lakeの真価
今回リークされた情報から考えるに、Panther Lake-HはPコアとEコアのハイブリッド構成、分割されたキャッシュとNPU、そして独立した巨大なXe3グラフィックタイルを備え、これらすべてが、AI時代、そして高解像度ゲーミング時代のノートPCに求められる性能を、信じられないほどの低消費電力で実現するために設計されていることが想像できる。
AMD優位の市場にIntelが一矢報いることができるのか、今後の動向に注目だ。